雑感:電解水の危険性

掃除用の電解水で油汚れを強力に落とすものは危険です

昨日(5月31日)テレビ番組を見ていて気にかかったことを書いておきます。掃除の工夫を扱う内容なのですが、その中で掃除には電解水(アルカリ水)を用いると良いということを紹介している番組でした。掃除や洗濯をTV番組で扱ってくれることは、洗浄分野の私からはとても有り難いことで、色々な工夫を紹介していただくことも私にもヒントになることも多くて楽しみにしているわけですが、人体の危険性に関わることで誤情報が広がることは防がねばならないと思っておりますので、番組や個人は攻撃する意図なく、下記の情報を発信したいと思います。

掃除用の電解水で、食用の油類を強力に除去する作用のあるものは、人体にとって非常に危険です。電解水は水から作ったものなので安全だと考える人もいるかもしれませんが、原料が何という事は関係ありません。電解水を製造する過程で生成されるのは、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムと考えて頂くと良いでしょう。これは、住まいの強力洗剤の成分として含まれているアルカリ成分そのものです。通常、電解水は食塩や炭酸塩等を溶解した水に電気を通して酸化・還元反応でアルカリ水と酸性水を得るのですが、そのアルカリ水にをアルカリ性に保っているのは、食塩や炭酸塩の構成成分であるナトリウムやカリウムであり、それと水が電気分解されて生じる水酸化物イオン(OH-)が一緒になって、ちょうど水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを溶解したのと同様の状態になります。この水酸化ナトリウムや水酸化カリウムというのは劇物で、使用には細心の注意が必要です。具体的にはたん白質を分解する作用が強く、皮膚にダメージを与えやすく、特に目に入ると角膜や結膜を含む目の組織を破壊するので非常に危険なものなのです。

アルカリ側に偏った水溶液の全てがそんなに危険だというわけではなく、重曹程度であれば弱いアルカリ度で問題ありません。また水酸化ナトリウムにしても非常に薄い濃度であれば問題ありません。どの程度かというと酸・アルカリの度合いを示すpHでいうなら、11未満であるなら家庭用の弱アルカリ性の洗剤類と同程度であり、目に入ってもよくすすいだ後に医者に診てもらえば問題が残ることはほとんどないと思われますし、9未満程度ならば危険性を意識する必要はなくなります。

しかし、一般の弱アルカリ性洗剤のアルカリの度合いでは、動植物油脂を分解してしまうような効果はありません。pH11未満の弱アルカリでは台所の油汚れに対しては太刀打ちできないのです。衣類に付着する皮脂汚れはpH10程度でも十分に効果が発揮されるのですが、台所の油汚れは動植物油脂が中心であるため、pHを12〜13程度に上げないと、即時的な効果は現れないのです。つなり、台所の油汚れを分解して除去できるアルカリ水というのは、アルカリの度合いが相当に強いために、人体には非常に危険なものなのです。

危険性を承知して、うまく利用することは掃除の効率を上げるうえで賢い方法だと思いますが、「電解水は水からできたものだから安全」という考え方は絶対に避けてください。苛性ソーダという危険物を主成分とする洗浄剤とほぼ同じ(若干の還元性の性質が加わっている点が特徴といえば特徴)だと意識して、直接素手で扱うことなくゴム手袋を着用し、防護眼鏡をかけて使用するようにしましょう。

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