洗浄・洗剤雑感20160927a

カチオン界面活性剤は酸性?

大口病院の事件、陽イオン(カチオン)界面活性剤系の消毒剤が原因物質であると発表されたようですね。さてカチオン界面活性剤に関連して気になる質問をいただきました。カチオン界面活性剤は酸性なのかという質問です。基本的にそれは間違った情報なのですが、気になってネット検索してみると、確かにそういう情報がありますね。ということで、修正情報です。

陽イオン界面活性剤とは界面活性剤本体が陽イオン、それに対イオンとして陰イオンが結合した状態の物質。水に溶解すると、陰イオン、陽イオンとばらばらになり、その陽イオン部分が界面活性剤本体として働きます。一方で酸性・塩基性というのは、水中の水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)の割合を指すもので、H+が多くなると酸性、OH-が多くなると塩基性(アルカリ性)となります。それで、界面活性剤のイオン性と、その水溶液が酸性かアルカリ性かという事は基本的には無関係です。

でも、なぜこのような情報が生まれたのでしょうか?想像するに、「陰イオン界面活性剤の石けんはアルカリ性だから」から生じた考え方ではないかと思います。では、なぜ石けんがアルカリ性なのかの説明を。

石けんはR-COO-・Na+の形で表される物質で、水溶液中ではR-COO-とNa+にばらばらに分かれます。R-COO-が界面活性剤の本体で、陰イオン界面活性剤の一種とみなされます。

さて、R-COO-ですが、これはR-COOHとpHのレベルによって行ったり来たりと、どちらにも変化できます。R-COOHは酸の一種であるカルボン酸ですが、R-COOHがどれくらいの割合でR-COO-になるかは、酸の解離定数(Ka)として表されます。

石けん水はR-COO-がたくさん含まれているのですが、その中の一部が下記のように水を加水分解します。

R-COO- + H2O → R-COOH +OH-

おっと、ここでOH-が出てきてしまいました。OH-が多くなりすぎると反応は逆方向に進むので、適度な弱アルカリ性レベルで納まるという事になります。一方で、同じような陰イオン界面活性剤でも他の大部分のものは水溶液は中性です。上記のような水の加水分解が起こらないからです。

さて、カチオン界面活性剤の場合はどうでしょう。R4-N+ + Cl- なんて形が主体です。特に第4級アンモニウム塩といって、窒素につながる4つの手が、全て炭素につながっているものが多いのです。窒素と炭素がつながっている部分は、液性を酸性に変えてもアルカリ性に変えても切れません。つまり、界面活性剤の本体はイオンのまま。OH-もH+も入れることも出すこともありません。だから、その水溶液は、基本的に中性になるのです。「強酸+弱アルカリ=弱酸」のような形で考えると勘違いしてしまいますね。アンモニウムと聞くと、弱アルカリの雰囲気がありますから。塩素は塩酸の強酸が連想されますし。

但し、アミンとか第1級〜第3級アンモニウム塩と呼ばれるタイプ、つまり窒素に直接水素がくっついているタイプは酸性側に偏る場合があります。

R3-N(+)-H + OH- → R3-N + H2O 

アミン塩はOH-を消費してアミンになります。OH-が少なくなるという事は、そのままH+が増えるという事になり、酸性側に偏ることになります。でもこれらの反応から想像できるように、このタイプは使用時の安定性の面で劣っています。殺菌剤等では第4級アンモニウムが主体になるでしょうね。

なお、アミンはR3-Nの形で、それを酸性溶液につけると第3級アンモニウム塩になります。ほぼ同様のものと考えてOKです。

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