☆かぶれと湿疹

 洗剤の肌荒れに関する情報としては井上勝也編集の「みんなで考える洗剤の科学」(研成社)の第7章で千葉大学看護学部教授の内海滉教授によって洗剤の皮膚への影響を医学者の立場から説明されている部分が大変に参考になるのでお薦めしたい。いわゆる噂レベルでの安全性論議ではなく、実際の医学系研究者レベルでの論点が非常に分かりやすく説明されているので興味のある方は是非ご覧頂きたい。
 まず洗剤による肌荒れについて考察する上で重要なポイントは、皮膚障害には「かぶれ」とよばれる接触性皮膚炎と「湿疹」と呼ばれるものに分けて考えることができるという点だ。接触性皮膚炎は外界の原因物質と接触することによって生じるもので、接触した部分を中心に反応が現れることが特徴となる。「うるし皮膚炎」と同様に原因が明確になっている場合で、「化粧品皮膚炎」、「洗剤皮膚炎」といった名称で呼ばれる。一方で湿疹は「小児湿疹」、「乳児湿疹」、「慢性湿疹」のように、原因ではなく、かかっている人や、その湿疹の状態を枕詞として表す。
 湿疹は、ひじの内側、ひざの内側、わきの下、陰部、頭部などに、人体に左右対称で現れるとともに、紅斑、水疱、かさぶたなどがの種々のものが混ざり合う。しかし、皮膚炎の方は、原因物質に触れた部分のみに、紅斑のみ、または水疱のみが一様に並ぶといった湿疹とは異なる特徴で現れる。皮膚炎は外側からの原因で、湿疹は内側からの原因で発症するとイメージして良いそうだ。外側からの原因でも湿疹に関与する要素はあるし、内側からの原因が皮膚炎に関与することもあるが、消費者レベルで肌荒れの全体像を把握するためには接触性皮膚炎と湿疹との違いは知っておく方が良いであろう。
 洗剤類の皮膚に対する影響は、化学物質の中毒性接触皮膚炎(一次接触皮膚炎)とアレルギー性接触皮膚炎の2通りに分けられる。強い酸やアルカリなどで皮膚が損傷を受けるといった、だれにも共通する皮膚炎が中毒性接触皮膚炎であり、だれにでも起こるのではなく、他の人は何ともなくとも個人によっては皮膚炎が発生するというタイプのものは、アレルギー性接触皮膚炎とみなされる。この両者は皮膚炎の症状によっては複合的で明確に区別できない場合もあるが、その対処のためにはどちらのタイプの皮膚炎かを見極める必要がある。石けんや合成界面活性剤は、この両方のタイプの皮膚炎の原因となる。
 アレルギー性接触皮膚炎は、アレルゲン(抗原物質)が体内に侵入して抗体が生成され、そのために抗原抗体反応が起こることによって発症する。アレルゲンとなりうるのは個人によって様々だが、身体洗浄用の洗浄剤や化粧品の容器等に記されている表示指定成分は、厚生省が医療機関等からの報告でアレルゲンとなりうると判断した化学物質が中心であり、化粧品には含有される場合には表示することが義務づけられている。
(2000年8月14日)


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