☆「1ヶ月以上石けんシャンプーを継続すべき」の真の意味は?

 さて、一般に石けん系シャンプーに切り替えることによって毛髪の質が良くなるという体験談を見てみると、非石けん系シャンプーから石けん系シャンプーに切り替えて1ヶ月程度で毛髪の質が回復するとされている場合が多い。頭髪の成長は0.35mm/日とされているので1ヶ月で1cm程度ということになる。1cmのみ健康な毛髪が生えてきただけで毛髪全体の質が向上するように感じられるとは考えられない。あくまで、既に生えている毛髪自体の質が変化したと考えるべきであろう。
 このことより、「非石けん系シャンプーがキューティクルを溶かすことが原因」という説が、実際上根拠のない説であることが明白になる。キューティクルが溶けているという前提では、石けん系シャンプーに替えたところでそのキューティクルは元に戻るはずもないので、毛髪の質は回復しない。1ヶ月での回復というのは「キューティクル破壊原因説」を否定する裏付けとなる。
 それでは、1ヶ月で回復という原因は何であろうか。実は、1ヶ月での回復というのはトリートメントと同様に、毛髪に何らかの物質を付与した結果としか考えることができないのだ。毛髪に付与された物質の正体は何か。それは、石けんの成分から変化してできた脂肪酸であると考えられる。石けんで洗浄した後、皮洗物に残留する成分は石けん、脂肪酸、金属石けんの3種類だが、金属石けんはフケと同様の粉状の形状になるとともに、手触りを悪くするために問題視される物質だ。よって、石けん系シャンプーで洗髪した後は、一般には酢やクエン酸等の水溶液でリンスすることによって金属石けんを他の物質に変えてしまうことが一般化されている。実は、酢酸やクエン酸等の酸で処理すると、残留した石けん分も金属石けんも、ともに脂肪酸に変化する。脂肪酸は油成分の一種で、毛髪に浸透してトリートメント様の効果を示すことになる。石けん系シャンプーで洗髪する毎に少量の脂肪酸が残留していき、1ヶ月ほどで通常のトリートメント剤と同レベルの効果を果たす脂肪酸が毛髪に浸透することになるものと考えられる。
(2000年8月12日)

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