合成洗剤と環境問題

-地球環境時代の消費者運動の指針として-

大矢 勝 著、 大学教育出版 発行

ISBN 4-88730-373-4


やっとの事で著作をまとめることができました。理系の実験系の研究者はあまり本を出さないんですね。本当の専門書の、自分の専門分野に関わる部分を担当したり、あるいは大学等の教科書として利用できるようなものを少し書くといった程度で、書き物の主流は学会誌への専門分野の論文を投稿したり、あるいは専門分野の研究の解説文をやはり専門的な雑誌に載せるといったことになるんですね。特に社会問題に関わる内容のものは避ける傾向があるようです。「もしも、内容的に間違っていることが後に判明したら…」と、少し想像しただけで、それこそゾーッとしてしまいます。この分野の資料整理や研究を始めて、かれこれ7~8年ほど経ったでしょうか。作業を進めていくほど、それだけ多くの疑問点や、それまで正しいと思っていたことの訂正点などが明らかになり、「こりゃ、いつまで経っても本は出せないなぁ~」と感じておりました。

実は非常に個人的なことではありますが、昨年5月29日に父を亡くしました。脳梗塞等で半身が動かず余命僅かといった状態で昨年はじめより入院しました。この本を本格的にまとめるきっかけは「オヤジが逝く前に息子の書いた本を見せたい」という極めて個人的な理由です。夏頃まではもってくれると、勝手に信じ込んで5月はじめに一応まとめて、ある学術出版補助基金に応募しました。が、父を亡くした後、出版補助の対象者から外れたとの知らせが舞い込み、ダブルショックを受けました。まあ今考えれば、募集していた書籍の分野と私の書いたものの内容の開きが非常に大きかったという点は否めませんが。

それから、内容的には多少の変更点等もありましたが、一旦、一冊の書籍としてまとめてみようと覚悟してしまえば後はずいぶん楽になりました。パンフレットで原稿募集をしておいでの大学教育出版にアタックしてみましたところ、企画出版として快くお引き受けいただきました。もともと、何らかの学術出版補助金を目当てにしていたものなので、書き方が堅苦しく、楽しく読んでいけるといったものではありません。よって、部数が売れなければ出版社さんに迷惑をかけてしまうかなぁ?と心細く思いながら、ひたすら大学教育出版の企画部の方々に感謝している次第であります。


さて、本書の内容は以下の通りです。

第1章 緒論
 本書執筆の目的と、消費者運動や洗剤関連語句の説明。

第2章 合成洗剤論争の歴史的考察
 合成洗剤問題の歴史を概説し、いくつかの論点については特別に考察しています。

第3章 洗剤の人体への毒性
 急性毒性、慢性毒性等について専門レベルの情報をまとめ、その結果より消費者レベルで広まっている情報の評価を行っています。

第4章 洗剤の環境影響
 洗剤関連の専門家レベルの情報をまとめています。

第5章 高度情報社会と消費者
 社会の情報化との関わりで、洗剤論争をめぐる問題点について考察しています。

第6章 地球環境問題と消費者
 環境問題のスケールのグローバル化、つまり地球環境対策という視点から洗剤問題を考察します。


そして、ズバリと言いたいことは次のようなことです。

「石けんが○で合成洗剤が×だから合成洗剤を追放すべきとする消費者運動は誤った情報に支えられており、今後の高度情報社会では時代遅れとなった。これからは、それぞれの商品のリスクやベネフィットを考慮しながら、地球全体としての負荷を少なくする方向で消費者運動は展開されるべきで、従来の合成洗剤反対運動もその方向に転換すべきだ。」
(2000年3月24)


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Last modifided 2001.08.03 Maintaied by OYA Masaru (大矢 勝)