EDTA法による水の硬度測定(Q&A_021)
水系洗浄において水の硬度は重要なファクターとなるので、水道水等を用いる洗浄試験ではその硬度を測定しておく必要がある。ここでは広く用いられているEDTAとEBT指示薬を用いる水の硬度測定法について説明する。
【試薬】
[アンモニウム緩衝液(pH=10)]
塩化アンモニウム(NH4Cl)6.75 gを濃アンモニア水57 mLに溶かし,水を加えて100 mLとする。
注)アンモニアは10%以上の濃度で劇物扱いになるが、上記の方法では濃アンモニア水(一般に28%)を0.57倍希釈したことになるので約16%濃度のアンモニアを含むので劇物扱いとなる。水を加えて100mLとするところ、200mL希釈にすれば約8%濃度のアンモニアとなるので劇物扱いではなくなる。緩衝液は濃度が下がると緩衝作用が低下するが、滴下量を増せば問題ない。
[EBT指示薬]
エリオクロムブラックT(EBT)0.5gと塩酸ヒドロキシルアミン(=塩化ヒドロキシルアンモニウム)4.5gを100mlの無水メチルアルコールに溶解したもの。或いはEBT0.5gをトリエタノールアミン100mLに溶解した溶液を用いる。褐色瓶に密栓し暗所に保存する。
注)塩酸ヒドロキシルアミンとメチルアルコールは劇物なので取り扱いには注意が必要である。塩酸ヒドロキシルアミンは測定対象外の金属イオンによるEBTの分解を防ぐ目的で添加されるが、それらの金属イオンがほとんど含まれていない場合は加えなくてもよい。
[EDTA標準水溶液]
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(分子量:372.55,略称:EDTA-2Na,Ethylenediaminetetraacetic acid disodium salt dihydrate)の 0.01M水溶液(3.73g/L)。市販特級のEDTA-2Naは80℃で5時間以上乾燥すれば純度99.5%以上になる。
スイスのSwissatest Testmaterialien AG(旧EMAP社)の汚染布。欧州のテーブルクロスの洗浄等を想定した飲食物関係の汚染布が多いのが特徴的。日本では日本資材株式会社から入手が可能。[1][2]
【測定手順】
試料液20mlをホールピペットで100mlコニカルビーカーにはかりとり,アンモニウム緩衝液1mL,EBT指示薬3~5滴を加える。ビーカーをマグネチックスターラーで弱く攪拌しならがEDTA標準液をビュレットで滴下し,溶液の色が赤から青に変化したところを終点とする。
[参考資料]
[1] 上野景平, EDTAの使い方, 分析化学, 8, 207-214 (1959) https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku1952/8/3/8_3_207/_pdf
[2] 愛知県総合教育センター:理科の広場高等学校化学:身近な化学:水の硬度測定, https://apec.aichi-c.ed.jp/kyouka/rika/kagaku/2018/mijika/mizunokoudo/mizunokoudo.htm
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横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
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